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- 女性のSLE専門医からのメッセージ②
2023年8月、ザ・プリンス さくらタワー東京にて取材
若い年代の女性患者さんが多い全身性エリテマトーデス(SLE)。
SLEと付き合いながら日常生活を送るには何に気をつければよいか、妊娠・出産、仕事をするにはどうしたらよいかなど、
多くの患者さんはさまざまな疑問・不安を抱えながら治療を続けていらっしゃいます。
SLE診療に携わっている4名の女性専門医に、SLE患者さんが気をつけるべき日常生活上の注意点や
ライフイベントを見据えた治療についてお話しいただきました。
日常生活における注意点
SLE患者さんが日常生活において注意すべき点について、どのように説明をしていますか?
高桑日常生活では、特に春先から夏にかけては紫外線に注意するようお伝えし、日々の生活では日焼け止めクリームに帽子か日傘を使用し、海やプールなどに行く場合は短時間にしてくださいとお話ししています。また感染症に関しては、人ごみをなるべく避けることや、マスクと手洗いを徹底することを指導しています。症状が回復すると自分が病気であるという認識が下がって、紫外線や感染症対策を怠り、症状がぶり返すこともあるので注意が必要です。さらに、服用している薬剤の影響で食欲が増す患者さんもいらっしゃるので、塩分やたんぱく質などを摂り過ぎることなく、バランスの良い食事を心掛けるようにお伝えしています。
脇谷私も紫外線対策についてお話ししますが、患者さんの中には細かく気にし過ぎる方もいらっしゃるので、きちんと対策をとれば通常の外出ができることも併せてお伝えしています。
妊娠・出産とSLE治療
SLEは若い年代の女性患者さんが多いので、妊娠・出産を希望される方もいらっしゃると思いますが、そのような患者さんにはどのようなお話をしていますか?
高桑SLE患者さんのライフイベントの中で、子どもを持つこと(挙児)を希望するかは大きなポイントになると思いますので、治療を始める前に挙児希望の有無を必ず確認しています。そして希望する患者さんであっても、病気の勢いをまず抑えなければならない時期は、治療を優先させるため避妊していただく必要があることをお伝えし、妊娠・出産に向けて計画的に治療を進めることの重要性をお話ししています。
橋本なるべく早い段階から、既婚の患者さんに対しては挙児希望の有無や希望人数、未婚の患者さんに対してはパートナーの有無などをお聞きしています。妊娠の可能性がある患者さんで避妊が必要な場合は、避妊の方法や確率などを詳しくお伝えし、患者さんからの質問にも資料などを使ってしっかりお答えしています。
和田初診時に、SLEという病気と向き合うにあたっては妊娠を計画的に行う必要があること、妊娠を希望しない間はしっかり避妊することをお伝えしています。その後、治療を続けている間も1年に1回程度は挙児の希望やパートナーの有無などを確認するようにしています。患者さんの中には、男性医師が担当で妊娠について直接聞きにくいという方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような場合は問診票などに妊娠の予定があることを記載して看護師に渡していただくのも良い方法かもしれないですね。
仕事や学業とSLE治療
SLEと付き合いながら仕事をする際の注意点などは、どのようにお伝えしていますか?
橋本SLE患者さんにとって、妊娠・出産とともに就労は重大なライフイベントであり、職場の人の理解が得られず悩んでいる方や、自分がどこまで働けるか不安に感じている方が多くいらっしゃいます。私は診察時に、仕事をする上で困っていることはないか必ずお聞きするようにしています。また、病気からくる倦怠感が強い場合などは、仕事を辞めることをまず考えるのではなく、しっかり休んでリセットしてまた働くというように、リセットする方法を見出すようお伝えしています。
和田仕事への向き合い方は人それぞれだと思いますので、まず患者さんには楽しく仕事ができているかをお伺いしています。体調を理由に実は仕事を辞めたいと思っている場合は、診断書を発行することもあります。一方、仕事が楽しくても少し無理をしているような場合は、ストレスがSLEの病態に影響することをお話しし、「体調管理も仕事のうち」であることをお伝えしています。
高桑和田先生のおっしゃる通り、仕事に対する考え方は個々の患者さんによって異なるので、患者さんそれぞれの気持ちや背景によって対応やお話する内容を変えています。仕事を何とか頑張りたい方には症状がない状態(寛解)をしっかり維持できるように治療を変更することもありますし、休みたい方には診断書を発行して休職をサポートすることもあります。
橋本SLE患者さんが働く上では、職場の人の理解という点も非常に重要だと考えます。
高桑そうですね。現在、企業によっては生理休暇が取得できますが、そのようにSLE患者さんが病欠にならずに休めるような休暇を設けるなど、企業側も患者さんが働きやすい環境作りを検討していただきたいと思います。
学童期や思春期にSLEを発症された患者さんは、学業を行いながら治療を進める必要がありますが、どういった点に注意されていますか?
脇谷学童期および思春期の患者さんは、修学旅行、体育祭、受験などの学校関連のイベントがあるので、予め分かっていたら予定を教えていただくようにしています。そして、それぞれのイベント時は患者さんの希望や緊急性がなければ大きく治療を変えないようにするなど、患者さんの生活や予定に合わせて治療強化のタイミングを変更するなど対策をとるようにしています。
本日は、ありがとうございました。