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- SLEの診断/SLEの検査
SLE(全身性エリテマトーデス)を診断するための検査では多くの場合、一般検査、確定診断をするための検査、他の疾患と鑑別をするための検査、さらには病気の状態を把握するための検査が同時に並行して行われます。
血液検査
一般検査
赤血球・白血球の数を調べる
血球を構成する赤血球や白血球(中でもリンパ球)、血小板の減少がないか調べます。
体内の炎症を調べる
体内で炎症が起こると、血液や組織液の中にある「免疫グロブリン(抗体としての機能と構造を持つタンパク質の総称)」が増えます。また、赤血球が沈む時間を調べる検査で、通常よりも速く沈むようになることがあります。これらの検査を行うことで、体内の炎症の有無や程度を調べます。
腎機能を調べる
SLE患者さんは腎機能が低下しやすいため、血液検査で腎機能の指標となるクレアチニンや尿素窒素(BUN)などの成分を調べます。
確定診断のための検査
SLEを確定診断するため、血液検査でさまざまな抗体を調べます。あわせて、他の膠原病との鑑別または除外するための検査を行います。
抗核抗体
抗核抗体とは、細胞の核の部分に反応して結合する抗体の総称で、自己抗体の一つです。ほとんどのSLE患者さんは抗核抗体を持っていることから、血液中に抗核抗体があるかどうかを調べます。ただし、膠原病など他の自己免疫疾患でも抗核抗体を持っている場合があるため、さらに詳しい検査で病気を特定していきます。
抗核抗体には、抗体が結合する核の成分によって、さまざまな種類があります。例えば、抗体が核の中のDNAと結合した場合は「抗DNA抗体」となります。
〈抗dsDNA抗体〉
細胞の核にあり、遺伝情報の伝達や、それをもとにタンパク質を合成するはたらきがあるDNA。「抗DNA抗体」には、「抗一本鎖DNA(ssDNA抗体)」と「抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体」が存在します。SLEでは「抗dsDNA抗体」がよくみられるため、他の病気との鑑別に用いられます。
〈抗Sm抗体〉
細胞の核にある抗原には多くのタンパク質が含まれていますが、その中の一種類の自己抗体である「抗Sm抗体」はSLEによくみられる抗体です。また、「抗PCNA抗体」や「抗Ki抗体」もSLEに特異的な抗体としてあげられます。
〈抗リン脂質抗体〉
細胞膜の主な成分であるリン脂質と結合したタンパク質に対する自己抗体の総称を、「抗リン脂質抗体」と呼びます。「抗カルジオリピン抗体」や「ループス抗凝固因子」「抗β2グリコプロテインⅠ抗体」などが含まれます。この抗体を持っていると、動静脈に血栓ができやすい、出血時に血を固めるはたらきがある血小板が減少しやすい、妊娠中の方であれば流産しやすい、などの特徴があります。
尿検査
SLEの症状の一つであるループス腎炎が起きると、腎機能が低下し、尿の中にタンパク質が出てくるなどの異常があらわれます。そのため、ループス腎炎の有無や重症度を調べるために、尿検査を行います。
便検査
大腸などの消化管での出血がないかを調べるために、便潜血の有無を調べます。
生理学的検査
臓器障害の有無や重症度を調べるために、さまざまな生理学的検査が行われます。心電図、心音図、呼吸機能、脈波(動脈を伝わる脈のスピード)、脳波、腎機能、筋電図、末梢神経伝達速度などの検査があります。
画像検査
心臓や肺に障害が起きていないかを調べるため、X線検査を行います。そのほか、全身のさまざまな臓器や関節などを調べる際に、超音波、シンチグラフィ、CTスキャン、MRI、血管造影などが行われます。
病理組織検査
体の組織の一部をメスや針で切り取る「生検」を行い、切り取った組織や細胞の状態を電子顕微鏡などで調べる検査です。皮膚や腎臓、肺、血管、筋肉、末梢神経、リンパ節、唇などの生検が行われます。
【参考文献】
橋本博史:全身性エリテマトーデス臨床マニュアル第3版. 日本医事新報社. 2017.
【監修】
北海道大学大学院医学院・医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授 渥美 達也先生