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SLEとは
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)は、その英語名の頭文字をとって「SLE」とも呼ばれます。systemicは「全身の」という意味で、全身にさまざまな症状を起こすことを意味しています。またlupusは「狼」(ラテン語)、erythematosusは「赤い斑点(紅斑)」をそれぞれ意味し、SLEの皮膚症状としてよくみられる“狼に噛まれた痕のような紅斑”を表すという説があります。
SLEは、代表的な「全身性自己免疫疾患」の一つです1)。免疫とは、ウイルス・細菌などの外敵が体内に侵入して細胞に害を及ぼしたり寄生し続けないように、「自己の細胞」と「自己ではない外敵」を見分け、後者を攻撃する仕組みをいいます。しかし、自己の正常な細胞や組織も攻撃してしまうのが「自己免疫疾患」です。
SLEの原因
SLEを発症する原因としては、免疫の異常や遺伝的要因、環境的要因、ホルモンの影響があるといわれています。
免疫の異常
本来、人に備わっている免疫は、ウイルスや細菌から体を守るため、異物が体内に侵入すると「自己ではない外敵」と認識し、抗体をつくってこれを攻撃します。しかしSLE患者さんの場合、免疫のはたらきに異常が起こり、自分の正常な細胞や組織を攻撃する抗体(自己抗体といいます)がつくられてしまいます。
SLEではさまざまな種類の自己抗体がつくられ、その状態が持続します。主な自己抗体は「抗核抗体」で、SLE患者さんのほぼ全員(98~99%)にみられます2)。自分自身の細胞の核の物質と反応し、免疫複合体(抗原と抗体が反応してできる多分子結合体)をつくります。そして、この免疫複合体が体内で増え、さまざまな部位や臓器に沈着することで、炎症や臓器障害を引き起こします。
近年、こうした免疫異常の形成にⅠ型インターフェロン(免疫機能に重要な役割を果たす、細胞から分泌されるタンパク質)の影響があることがわかってきました。
遺伝的要因
SLE患者とそうでない女性の第一度近親者におけるSLE発症率は、2.64%:0.40%です3)。さらに遺伝子が同じ一卵性双生児がともにSLEを発症する確率は24~69%で、二卵性双生児(2~9%)に比べて高いことが報告されています3)4)5)。これらのことから、家族内発症率とともに遺伝的な要因があると考えられています。
しかし一方で、一卵性双生児のSLE発症率が100%の確率ではないことから、遺伝的な要因に加えて何らかの環境要因なども、発症に関与している可能性があるとみられています。
環境要因(紫外線・薬剤など)
紫外線(日光)に長時間さらされることが、SLE発症のきっかけになることが多くあります。またSLEの症状が落ち着いている時に再び症状があらわれたり悪化する要因にもなります。さらに、日光過敏症になる頻度も高くなります。
他にも、特定の薬剤や外科的手術、過度のストレス、毛染めや口紅なども発症の要因になると考えられています。
ホルモンの影響(妊娠・出産)
SLEの患者さんは、妊娠・出産が可能な20代から40代の女性に多いという特徴があります。そのため、性染色体や性ホルモンに関わる遺伝子が、SLEの発症に関わっていると考えられています。
SLEの国内患者数・男女比・平均発症年齢
2013年に国内でSLEとして指定難病の特定医療費受給者証の発行を受けている人は61,528人6)で、現在は未診断の方も含めて約6万人~10万人の患者さんがいると推測されています。男女比は1:96)と圧倒的に女性に多く、すべての年齢に発症しますが、特に20代から40代までの年齢で多く発症がみられます。このことから、妊娠可能な年齢の女性の発症が多いと考えられています。
【参考文献】
橋本博史:全身性エリテマトーデス臨床マニュアル第3版. 日本医事新報社. 2017.
【監修】
北海道大学大学院医学院・医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授 渥美 達也先生